海外で商標登録を行う重要性について
特許庁のホームページにおいても商標に対する国際的な取組について言及されていますが、年々海外に輸出される食品や酒類が増えている一方、模倣品や偽造品の販売も増えていることが問題視されています。
参考:特許庁「海外における商標の抜け駆け出願(冒認商標)対策」
[更新日 2023年3月20日]
海外への輸出をされている、または検討されている皆さまには無視できない問題であり、商標を登録して維持することがより重要になってきていることは確かといえます。
商標の保護は世界的に属地主義(自国領域の範囲内で限定されること)が採用されているため、 自国以外の海外で商標を保護するためには、その国で商標登録をしなければなりません。
国内で既に登録されている商標であっても、登録せずに外国で使用すると、その国で登録されている商標権を侵害する可能性があります。
諸各国への輸出については、国税庁「日本酒輸出ハンドブック」のページよりダウンロードが可能ですので、この機会に是非ご覧ください。
参考:国税庁「日本酒輸出ハンドブック」より
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/yushutsu/handbook/index.htm
中国商標の申請状況を知ろう
商標の申請数では世界一といえる中国で商標登録を考慮する場合は、できる限りリアルタイムで申請状況を把握することをお勧めします。
特に国内の「地域ブランド」などは中国への出願をしなかったため、第三者に先行出願されるという状況を招いてしまっている例が多いようです。
中国では商標法制度が「先願主義」(複数の商標登録出願人が、同一商品又は類似商品について、同一又は類似の商標登録出願をしたときは、先に商標登録出願した者に商標登録を認める主義)を採用しています。
また、2018年の国家機構改革では、一出願多区分制(中国語では「一標多類」)を導入したため、1件の商品やサービスに対し、複数区分の出願が可能になりました。
そのため、2017年は商標の新規申請数が2,243,284件(33類は74,547件:全体の3.3%)でしたが、2018年には6,257,259件(33類は137,929件:全体の2.2%)と大幅な増加を記録しました。
その後2019年にも商標法改正、2021年の商標審査審理指南の公布等の動きが続きましたが、コロナ禍の2021年度においても7,437,036件(33類は244,277件:全体の3.3%)と、増加の傾向にあるといえます。
それとともに、本来の商標利用とは異なる目的で登録される商標も増えています。
インターネット検索等を利用して、外国ブランド等の情報を容易に入手できるため、先に悪意の商標出願がされてしまうケースも増えています。
著名な外国のブランド等を商標登録した上、自社ビジネスのブランド化に利用したり、悪質な場合は本来の保有者である外国企業に対し警告状を送付して商標を高値で買い取らせようとすることも現実的に起こっています。
そのようなトラブルを避けるためにも、まずは申請状況の把握が必須であると思われます。
商標登録ができなかったケースとは
近年実際に、海外での商標登録ができなかったケースを紹介します。
■ケース1
海外に商標出願する際、国内の弁理士に申請状況の調査を依頼したところ、 既に第三者が当該商標の出願・登録をしていたことが判明した。
■ケース2
海外で模倣品が発見されたので国内の弁理士に調査を依頼したところ、 その模倣品の製造販売業者がすでに商標登録をしていたことが判明した。
■ケース3
中国の商標代理会社に商標公報のウォッチングを依頼したところ、 第三者による出願・登録が判明した。